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第一話:村娘、悪の道に落ちる
見渡す限り、ライ麦畑が広がっている。
わたしは王都からの家路を小走りで急いでいた。
ここはアルミナ大陸の北東にある小さな国、シュテイン王国。
わたしの名はミナリー・ミナーセ。王国のどこにでも居る普通の村娘だ。
どれくらい普通かと言えば、わたしには剣の心得も魔法の心得もないし、わたしの村に勇者が立ち寄ったこともなければ、魔王の配下の魔物に襲われたりしたこともない。
平平凡凡な、変わることのない日々。平和な日常がわたしの全て。
本当に何もない、普通の村娘であることをわたしは幸せに思っている。
大好きな家族や、優しい村の人たちに囲まれながら過ごす日々。今以上の幸せなんて、きっとこの世界には存在していないだろう。
ほんの少し……明日の食事に困るほど家が貧乏ではあるのだけれど。
ほんの少し……明日にも財政破綻してしまいそうなほどに村が貧しくはあるけれど。
それでも、わたしはこの幸せがずっと続いて欲しいと思う。
大金持ちの豪商に見初められて妻になるよりも、王様に見初められてお妃さまになるよりも、今の生活の方がずっと幸せに違いないのだ。
そう自分に思い込ませないと、毎日がやっていられないのだっ♪
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