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しわがれ声。
身長はわたしと同じくらいだけど、酷い猫背だ。
前傾姿勢だから、紺色のローブのフードに隠れて顔が見えない。声や見た目から、性別はわからなかった。歳はけっこう上の方だとは思うけれど。
「えーっと、変質者か露出狂の方ですか?」
とりあえず第一印象でそう訊ねる。ローブを脱いだら丸出しとか、普通にありそう。
『誰が変質者か露出狂じゃ! お嬢ちゃんがどうしてそう思ったか知らんが、儂にそのような趣味はない。儂の名は○○○じゃ。通りすがりの魔術師じゃよ』
「魔術師?」
杖は持ってないけど、確かに見た目は魔術師っぽい。
ただまあ、最近は魔術師を騙った詐欺や事件も多いって聞くし、本物かどうか怪しいなぁ。
『見たところ、何やらお嬢ちゃんが困っておる様子じゃったんでな。気になって声をかけてみたんじゃ。どうじゃ、この老いぼれに相談してみんか? 何に困ってるんじゃ?』
「お金! 欲しい!」
『す、ストレートな悩みじゃな。じゃが、それならお嬢ちゃんに丁度良い仕事がある』
「仕事? 魔法でお金作ってくれるんじゃないの?」
『魔法はそこまで万能でないんじゃよ』
「なぁーんだ。使えない魔術師だなぁ」
『おい』
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