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「君達は、一般的な婚姻関係を結べないわけだから、この文書は、重要だよ。
お互いに、これだけは相手に貰ってもらいたいとか、譲りたいってものが、これからいくらでも出てくると思うんだ。君達の資産なり、大切な物を考えて作るんだから、気合い入れてよ。先々、考えが変わったら、新しい文書を作って更新すればいいだけなんだし。
ただし、次から次へと書き換えるのは考えものだからね、5年とか10年とか、決めておいて、中身の確認や書き換えをするのがいいと思う。
将来、同性間の婚姻だって認められるようになるかもしれないしね。素早く対処出来る人間がいた方がいいだろう。
私なら、作成に立ち合うだけでなく、文書の管理、更新手続き、執行。すべてをフォロー出来ると思うよ。」
「ありがとうございます。…でも、そこまでしてもらったら、それなりに掛かるんじゃ。」
「ハハハ…そんなこと気にしてるのかい。無茶なことは、君達に言う気はないよ。懇意にしてもらってる速水さんからも、くれぐれも頼むって言われているし、それにね、速水さんから、文書の作成費用って、もうもらってるんだ。」
「えっ?」
「真澄さんを探すときも思ったけど、本当に愛されてるねぇ、君は。」
「俺がですか?」
「ああ、そうだよ。それでだ…速水さんからは、君達のご祝儀代りに費用出すって、お金預かってる。必要経費を差し引いて、残ったら君に渡してって言われているんだ。」
ちょっと待っててと、金庫から、祝儀袋を出してきた宮武先生は、俺達の前に、それを差し出した。
「はい、これが、速水さんから、君達へのお祝い。中身は、そのままだよ。
さっきの話だけど、私が、もらうのは、一般的な文書作成費用だけなんだ。だけど、ご祝儀から、それを差っ引くなんてのは、粋じゃあないよね。
費用は、私からの祝儀として、プラマイゼロってことで、いいじゃないか。このまま、納めて。」
「でも、そんなことしたら、先生損するんじゃないですか。」
「次の更新手続きからは、ちゃんと決まってる手続き費用をもらうよ。お客さんを一組増やしてもらったんだから、損じゃない。」
宮武先生は、笑ってそう答えてくれた。
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