蜜月の新生活

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「…ねえ、これ、どこに出しに行くの?」 「世田谷の区役所。…あのさ、まだ話してなかったけど、世田谷で、マンション借りたんだ。住民票、そこに移したから。」 「えっ?…谷口のお家から出るの?」 「独立しちゃ駄目とか、独り暮らし駄目とか言われたことないよ。…と言うかさ、家は自由主義。 第一、父さんも母さんも、仕事柄、家にいること少ないからさ、疑似的に独り暮らししているみたいだったからね。もう自由奔放だよ。 今度のこともね、別に反対されなかったよ。 逆にさ、結婚したんだから、別世帯持つのは当たり前だろうって言われた。」 「…そんなこと頭になかった。私は、谷口のお家に一緒に住むものだと思っていたから。」 「将来的には、そうなるかもしれないけど、まだふたりとも元気だしさ。今は、ふたりの生活を楽しもう。一応さ、新婚なんだし…。」 “新婚”って自分の口から言うと、恥ずかしいな…。 「…私は、どうすればいいの?」 「とりあえず、真澄が、今借りてる部屋は、解約しよう。2軒分は、家賃もったいないからね。」 「うん、わかった。」 移動中、これからの段取りの話をずっとしていた。 「…ごめんな。全部、俺の段取りで、真澄の意見聞かなくて。」 「ううん。私のために、いろいろ調整してくれたり、準備してくれたんでしょ。…ありがとう。」 「よかった…。怒鳴られるんじゃないかって、俺ね、内心ヒヤヒヤしてたんだ。本当のことを言うとさ。」 「海斗でも、そんなこと思うんだ。」 「そりゃ、思うよ。俺だって、普通の人間です。怖いことは、怖い。」 「ふふふ…。海斗ったら。」 手を繋いで俺達は、区役所へ入っていった。
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