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「素敵なお部屋ね。」
最近は、環境面だけでなく、防災の面からも、ある程度の空き地や緑地帯を、建物の周りに作らなければならなくなっていた。だから、人工的とはいえ、マンションは、思ったよりも自然の中にあったんだ。
ベランダからマンションの周りの木立と、近くの公園の広場が見えた。
「もう、生活出来る様になっているのね。」
「うん。少しずつ荷物運んだからね。後は、君の荷物を入れるだけだよ。」
真澄は、玄関から、水回り…トイレ、バスルーム、キッチンを順番に見て回る。
「うふっ。アイランドキッチンだ。」
「家のキッチンと同じなら使いやすいかなと思ってさ。なんせ、俺、料理するの好きだから。」
「そういえば、私、まだ、海斗の本格的に作った料理食べたことないよ。」
「そうだな…。よし。今から、買い物行う。」
「えっ、ここ、もう使えるの?」
「当たり前じゃない。今日、このまま泊まっちゃっても問題ないよ。一通りのものは、セット出来てるんだから。」
近くにスーパーがあったから、そこへ行ってみることにした。
「食材やちょっとした物なら、ここでOKね。」
両手一杯に買い物して、またマンションへ戻ってくる。
「こんにちは。」
エレベーターから降りてきた赤ちゃん連れの若いお母さんとすれ違う。挨拶してくれたから、こちらも挨拶を返した。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
笑顔でお互いの顔を見合わせる。ここには、俺達を詮索したり、責める様な人は、今のところいない。
いや、もし、そんな人がいたとしても、俺達は、胸を張って、対抗出来る。
誰にも非難される筋合いだってないし、俺達は、少なくとも、公的機関に認められた正当な権利を持っているんだから。
ここから、新しい生活の第一歩が、始まるんだ。
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