蜜月の新生活

8/13
前へ
/397ページ
次へ
「素敵なお部屋ね。」 最近は、環境面だけでなく、防災の面からも、ある程度の空き地や緑地帯を、建物の周りに作らなければならなくなっていた。だから、人工的とはいえ、マンションは、思ったよりも自然の中にあったんだ。 ベランダからマンションの周りの木立と、近くの公園の広場が見えた。 「もう、生活出来る様になっているのね。」 「うん。少しずつ荷物運んだからね。後は、君の荷物を入れるだけだよ。」 真澄は、玄関から、水回り…トイレ、バスルーム、キッチンを順番に見て回る。 「うふっ。アイランドキッチンだ。」 「家のキッチンと同じなら使いやすいかなと思ってさ。なんせ、俺、料理するの好きだから。」 「そういえば、私、まだ、海斗の本格的に作った料理食べたことないよ。」 「そうだな…。よし。今から、買い物行う。」 「えっ、ここ、もう使えるの?」 「当たり前じゃない。今日、このまま泊まっちゃっても問題ないよ。一通りのものは、セット出来てるんだから。」 近くにスーパーがあったから、そこへ行ってみることにした。 「食材やちょっとした物なら、ここでOKね。」 両手一杯に買い物して、またマンションへ戻ってくる。 「こんにちは。」 エレベーターから降りてきた赤ちゃん連れの若いお母さんとすれ違う。挨拶してくれたから、こちらも挨拶を返した。 「こんにちは。」 「こんにちは。」 笑顔でお互いの顔を見合わせる。ここには、俺達を詮索したり、責める様な人は、今のところいない。 いや、もし、そんな人がいたとしても、俺達は、胸を張って、対抗出来る。 誰にも非難される筋合いだってないし、俺達は、少なくとも、公的機関に認められた正当な権利を持っているんだから。 ここから、新しい生活の第一歩が、始まるんだ。
/397ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加