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「別に、お前を特別扱いしてるわけでも、甘やかしてる訳でもないんだぞ。」
速水の叔父さんは、そう言うと、珈琲のお代わりするのに、席を立った。
事務所のミニキッチンの片隅に置いてある珈琲メーカーから、マグカップに珈琲を注ぐと、一口飲んで、ホッと息を吐いた。
「真澄さんのことを真剣に考えてる海斗のために、ちょっとだけ、手を貸してやろうってだけだ。
ちょっと真澄さんが働いていた銀座のラウンジを調べてみたんだが、あすこは、かなり高級なところだぞ。芳樹叔父さんクラスのセレブ御用達で、会員制だ。変な客は来ないから、ある意味安心だな。場末の怪しい雰囲気のいかがわしい店じゃないだろう。」
「…そんなのわかってます。」
「じゃあ、なんで駄目なんだ。」
「…ただ、俺が嫌なんです。真澄は、卒業してから、建築事務所で、普通に事務関係の仕事して働いていたんですよ。なのに、お母さんのことがあって、休みがちになったから、周りに迷惑かけないようにって辞めたんです。仕事が合わなかったとか、嫌になったとかじゃないんですよ。
だから、俺は、出来れば、そういう仕事に戻れるなら、戻ってもらいたいんです。それに…」
「…ん?なんだ?」
「…夜、家に居ないってのが嫌なんです。」
「そういうことか。」
訳知り顔で、叔父さんは、ニヤッと笑った。
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