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「夜、仕事が終わって帰って来て、家に真澄さんがいないことを考えると、嫌なんだな。仕事の中身よりも、そっちが、ウエイト大きいんだろ。」
反論出来ない…。
「そうだよ!嫌だよ!」
一言そう言ったら、言葉が溢れてきた。
「…そんなのは、俺の我が儘だよ。俺のエゴ。わかってんだよ、最初から。
真澄の人生は真澄のもので、やりたいって言うことを、俺が止める権利なんてないって、わかってる…。
でも、嫌なものは、嫌なんだ!!
セレブかもしれないけど、どこの誰か、わからないおっさんに酒注いで、愛想笑いさせるのも嫌だ。
ただいまって帰ったときに、真澄がおかえりって言ってくれないことも嫌だ。」
ポンポン…まるで、小さい子に言い聞かす時みたいに、俺の頭に手を置いて、叔父さんは言った。
「なあ、海斗。その嫌だって気持ち、全部を真っ直ぐに真澄さんに伝えたか?
表面だけで、そんなの駄目だって言わなかったか。夜の仕事だから、駄目だって言わなかったか。
もう一度、ちゃんと真澄さんの顔見て、気持ちを全部ぶつけてみろ。お前が真剣に、本音で話せば、平行だった話も、交差する部分出てくるかもしれないだろう。
その上なら、俺がいつでも相談にのってやる。さっきの話だって、進めても構わないんだ。ここでの仕事は、いくらでもあるからな。
わかったら、ほら、もう今日は帰れ。この後、特別な用事がある訳じゃないし、俺一人で大丈夫だから。」
俺は、少しばかり、そこに座ったまま考え込んでいた。
「…叔父さん。お言葉に甘えて、今日は帰ります。明日は、ちゃんと1日仕事させてください。」
「おう。じゃあ、また明日な。」
「はい。失礼します。」
俺は、真澄のいる家へ向かって、バイクを走らせた…。彼女と、ちゃんと話をするために…。
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