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「ただいま。」
「おかえりなさい。ねえ、今日は、帰って来るのすごく早くない?」
「叔父さんに、帰れって言われたんだ。」
「何か、ミスでもして怒られたの?」
心配そうな顔をするから、首を横に振って否定した。
「真澄に話があるから、早く帰らせてもらったんだ。」
「私に話?」
「うん、ここ座って。」
俺の隣を指差すと、真澄は、ちょこんと横に座った。
「あのさ。この前から、結論出てないこと。」
「結論出てないことって…もしかして、お仕事のこと?」
「うん、そう。」
真澄は、ちょっと眉間に皺を寄せて、俺のことを睨むみたいにしていた。そうだよな…ずっと、真澄の意見をNOって、突っぱねてるのは、俺なんだもんな。
「真澄。俺はね、俺の両親みたいな生き方したいなって思ってる。
二人とも自分の仕事に誇りを持っていて、一生掛けてもいいって思えるぐらいにのめり込んでる。そしてさ、お互い、仕事の好敵手であると同時に、尊敬しあってる。
俺もね、そんな二人みたいに、なりたいって思ってる。自分のパートナーとは、対等に生きていきたいと思っているよ。
だから、真澄が、何かしら仕事をしたいって思うならさ、遠慮せずにやってくれていいって思ってるんだ。でもね、前にしていた銀座のお店の仕事だけは、して欲しくないんだ。」
「どうして、そんな風に言うの?…私は、海斗が、職業を差別するような人だとは思ってなかったわ。すごく残念よ…。」
「誤解しないで!俺はね、何も職業差別をしたい訳じゃないだから。」
「じゃあ、どうして?どうして、いつもいつも、駄目の一点張りなの!」
「俺の我が儘なんだ…。本当に俺の…。」
「…えっ?」
意外な言葉に、真澄は、強く言えなくなって黙ってしまった。
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