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「谷口夫妻は、俺にとってというよりも、俺達夫婦にとって、とても大切な存在だ。海斗は、その一粒種だ。小さい頃から可愛がってきたんだ、幸せになるのなら力を貸したいと思っても不思議じゃないだろう。」
「…はい。」
「海斗が、親友の君を探し出したいと必死になってる姿を見て、俺は、手を貸した。
海斗が、一度だけ会った女の子に恋をしたっていうから、恋愛相談を聞いてやった。
恋をした相手が、君だとわかって、同性間の恋愛や結婚に悩んでた時も、相談に乗ってやった。
すべては、あいつのためだ。
その海斗が、また本気で悩んでる。だから、腹の中をぶちまけさせたんだ。
海斗は、本当に君のことを大切に思ってる。だから、自分の思いが君の行動を縛ることを恐れてる。君の自由を奪うことを恐れてる。それでも、言いたいことを溜めるだけが、優しさじゃない。時には、お互いが傷付いても、本音をぶつけ合わなきゃならないこともあるんだ。
真澄さん。君は、どうしたい?
今は、俺しか聞いてない。だから、海斗に言えないことも、ここでぶちまけていいんだよ。」
私は、深呼吸してから話始めたの。
「私が仕事に復帰することを、海斗が何故反対するのか、わかりませんでした。勝手に、夜の仕事で水商売だから反対してるんだと思ってました。
でも、そうじゃないってわかって…。
お互いの気持ちを正直に言い合いました。同じ考えのこと、正反対のこと、いろいろあったけど、お互いにお互いを大事に思ってることだけは、間違いないんだと、確信出来ました。
今日、ここへ一緒に越させてもらったのは、速水さんの提案してくれたことが、本当なら、きちんと話を聞くべきだって思ったからです。
雇ってくださるのは、速水さんであって、海斗じゃありません。だから、あなたから、仕事のことをもう少し詳しく聞いてみて、私に出来ると思えたら、改めて、雇っていただけるようにお願いさせてもらおうと思っています。」
私は、言いたいことを、ちゃんと言えたかな…。
心臓がバクバクいう音が、頭に響いているようだった。
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