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約束の水曜日。待ち合わせ場所に5分前に着いた俺は、笹森が来てないか、見回した。
「あれ?…まだ来てない。珍しいな、いつも時間に余裕で待ってるやつなのに…。」
そう、俺の知ってる笹森は、とても細やかな心使いの出来るやつで、どこかに集合ってなると、誰よりも早く来て、場所がわかるようにしてくれる。そんなやつだったんだ。
だから、5分前に来てないってのが、珍しくて、来たら、からかってやろうかなんて思っていたんだ。
さて約束の場所なんだが、そこには、とても枝振りのいい立派な金木犀の樹がある。
わかりやすくていいから、そこを待ち合わせにするやつは、結構いるんだ。
俺も、笹森との約束は、そこにした。
金木犀は、満開で、甘ったるいけれど、どこか心地よい香りが、鼻腔をくすぐる。
「綺麗だな…。」
枝を見上げた俺は、同時に、甘い香りを吸い込んだ。ふうっと息を吐きながら、前をみる。視界に入ってきたのは、とても可愛い女の子だった。
その女の子は、俺を見ると、ニコッと笑ってから、深くお辞儀をした。
慌てて、俺も、頭を下げたのだが、俺の記憶の中に覚えのある顔がない…誰だ?
街頭時計は、約束の時間を指していた。
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