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第7学区、とあるビルの屋上。ダークグレーのフリースのポケットに両腕を突っ込み、フードを深く被って街を睥睨する青年と、常盤台中学の制服にサマーセーターを着こなし、右手でコインをクルクルともてあそびながら青年と同じ方向を見る少女。
街は壊れていた。
生徒は逃げ惑い、警備員(アンチスキル)は混乱し対応に追われ、怪我をした人達は脚を引き摺り、動けない者には動ける誰かが肩を貸す。
割れた窓からは黒い煙が立ち登っていた。
「カオスだなっクハハハハ!」
「あんたの腐った性根には心底呆れるわね」
「その腐った奴に付き合うてめぇもてめぇだがなっ」
「勘違いしないでくれる?あんたに勝手気侭に暴れて貰うとあたしが今ここにいる意味ないわけ、わかる?」
「はぁあ??知ったことかよ、てめぇが何しようが俺が何しようが関係ねーだろ」
「あるから言ってんしょうがこのガキ!あたしに迷惑掛かるって言ってんのよ!」
「だぁあれがガキだぁ?!歳変わんねぇだろ!」
「精神年齢からしてお子ちゃまじゃないの」
この二人、とりあえず今一緒にいるが大して仲がいいわけではない。
毎度毎度口喧嘩や憎まれ口が絶えないのである。
「てめぇに言われたかないな!上条の兄ちゃん見つけた時とか一緒にいる時とか」
「わぁああああ!!わぁあ!わぁあ!うるさいうるさい!それ以上言うな!それ以上言ったら」
「今みたいに顔真っ赤で」
「黙れっつってんでしょうがぁ!」
少女は憤りなのか照れ隠しなのか、それまた両方か。耳まで熱くなったように顔を火照らせ息を荒げた。
少年はその反応を見て満足したのか、荒れる街に向き直る。
「そんなに好きなら向こうに着いて行きゃあ良かったのに」
「だ、だ、だ、だ、誰が好きっ…………ち、違うわよ………いいのよ別に………」
少年は目線だけを少女に向ける。
「安全なところに逃げてくれればそれでいいの。無事でいればそれでいいのよ」
まあ、巻き込まれ体質だしすぐ首突っ込むしで願いとは全く真逆かも知れないけど。
それよりも
「あたしは助けなきゃいけない。変態だけど、あたしの可愛い後輩だから。黒子は………」
「じゃあさっさと行けば?」
「言ったわよね?あんたを放っておくとろくなことがないのよ」
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