1.煙草

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昼12時。  3階の喫煙室には5人の強面刑事がいそいそと入って来ては、互いに肩を縮こませて煙草に火をつける。  近頃、頭のてっぺんが薄くなり始めた東城は、6人目が入って来るのを見るとあからさまに嫌な顔を向けた。 「あ、すいません。失礼します」  扉が閉まり、部屋の中の人口密度が一気に上がる。 「おう、木村。こっち来い」 「は、はい!」  “木村”。  そう呼ばれた新米刑事は、大先輩のオヤジ刑事の元まで割って入ると、「今日はこれ、試してみるか」とオヤジ刑事の差し出す煙草を有り難く頂く。  その様子を黙って見ていた東城は、煙草の火元が上がっているのに気付かずに、火元が指に当たって慌てて煙草を落とした。
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