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キーコ……俺の病は舌癌だ……舌の奥に五百円玉くらいの穴が空いている………
(ぜつがん……)
もう……俺の舌は動かない……腫れて食道がせまくなって食べ物も喉を通らない……やっと水を飲んで生きているありさまだ………
(……………アニー)
俺は……骨と皮だけの生けるしかばねになってしまった……こんな俺を見たら………
「トート、読んでいいよ」
「……よろしいのですか? まだ読み終わっていないのでは?」
「言っとくけど、下手な字を見て笑うなよ」
「へたなじ………?」
キーコは黙って手紙をトートにわたしました。
トートも黙って受け取り、初め字に驚いていましたが、読みはじはめてニヤニヤしながら……
そのうち手が小刻みに震え……ハンカチで涙をぬぐうようになりました。
トートはゆっくりと顔を挙げてキーコを見上げました。
「アニーさんは病いで亡くなられた……」
「そのようだね」
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