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キーコは頷きながら黙って聞いていましたが、
「アニー、もういいだろう。
あたしとトートのことだ、気分も悪いだろうがそれ以上突っ込まないでほしい」
と、ワイングラスをテーブルに強く置いて言いました。
逆に驚いたのは、アニーとトートでした。二人はキーコに視線を注ぎました。
「キーコさん、びっくりするじゃありませんか。
キーコさんが、わたしをかばっての発言なの?」
「ちょっと待ってトート、俺が調子に乗って……姉さんとトートの仲に水を差したみたいで……」
キーコの頭の中は、別世界のアニーと現実のアニーとが渦巻いているのでした。
キーコは頭を抱えながらテーブルに肘を着いてしまいました。
「どうしたのよキーコさん、あなたらしくないわ。
私の減らず口がでしゃばったのなら謝るわ」
「キーコ姉さんいったいどうした? 姉さんらしくもない。ワインに呑まれたのか?!」
その言葉にキーコはゆっくりと顔を挙げました。
「ワインなんかに呑まれはしないよ。
アニー、お前は小三の時、あたしに言った言葉を覚えていると言うんだね」
アニーはちょっと戸惑いましたが……。
「ああ、未だに覚えている、しっかりとな」と、答えました。
「……そうなんだ」
アニーは静かにキーコに近寄ると、かぶさるようにして優しくキーコを抱きしめたのでした。
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