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彼の手を握り返して、
「ありがとう、あの時は、ビックリしちゃって泣いちゃったけど、もう大丈夫。」
と答える。
彼も仕事が忙しそうだから、
こちらの状況がころころ変わる度に、仕事に集中出来なくなるのも申し訳なくて、
お疲れさま、とか、大丈夫、とか、ご飯食べてる、とか、そんなことはメールしていたが、
こちらの状況を詳しく伝えていなかった。
それが、余計に心配かけていたのだと、反省する。
「昨日、張りが落ち着いたって言われたよ。
あっ、でも、経管長が…
普通は、臨月まで3.5センチないといけないのに、3センチしかないから、赤ちゃんの重さを子宮に負担かけないように、とりあえず安静にしとかないといけないんだって。」
「俺もそれネットで調べた!3センチってなんだろ?って気になって!3センチ以下だと切迫早産て診断されるとかって。」
「そうらしいね、明日また先生の診察で、何て言われるかなー。あ、でもね…。」
おいでおいでの仕草をしたら、顔を近づける彼の耳元に手を当てる。
「ここの部屋の人、まだまだ臨月じゃないのに、経管長、1センチ以下の、
皮一枚で繋がってる、とか言って笑ってたの!」
そこまで言うと、一瞬耳を離して、
「え!?」
って驚いた彼と視線が合った。
その顔をみて、
「ブフフッ…」
思わず吹き出して笑ってしまった。
引きつった彼の顔が、人差し指を口の前にかざして、
「しー!!」
っと、静かにしなさい、のポーズをした。
また、こっち来ての、おいでの仕草をすると、耳を私の口元に近づける彼に、
「ごめん!不謹慎なんだけど…、
ここの人たちと比べたら、私が一番、状況的には悪くないみたいだから…
なんか安心しちゃって。」
そんな事で、比べたり、笑ったりしたことを怒られるかなって一瞬思ったけれど、
妙に納得した面持ちで、
今度は彼が内緒話のポーズをして、耳元で、
「まぁ、皮一枚に比べたらね…、それにしても、それは怖いね。」
と、彼が苦笑いした。
私の髪をまた手櫛でかきあげて、
「でも、落ち着いたって聞いて、少し安心したし、思ったより元気そうで安心した。」
そう言ってくれた。
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