10/16
前へ
/16ページ
次へ
彼の手を握り返して、 「ありがとう、あの時は、ビックリしちゃって泣いちゃったけど、もう大丈夫。」 と答える。 彼も仕事が忙しそうだから、 こちらの状況がころころ変わる度に、仕事に集中出来なくなるのも申し訳なくて、 お疲れさま、とか、大丈夫、とか、ご飯食べてる、とか、そんなことはメールしていたが、 こちらの状況を詳しく伝えていなかった。 それが、余計に心配かけていたのだと、反省する。 「昨日、張りが落ち着いたって言われたよ。 あっ、でも、経管長が… 普通は、臨月まで3.5センチないといけないのに、3センチしかないから、赤ちゃんの重さを子宮に負担かけないように、とりあえず安静にしとかないといけないんだって。」 「俺もそれネットで調べた!3センチってなんだろ?って気になって!3センチ以下だと切迫早産て診断されるとかって。」 「そうらしいね、明日また先生の診察で、何て言われるかなー。あ、でもね…。」 おいでおいでの仕草をしたら、顔を近づける彼の耳元に手を当てる。 「ここの部屋の人、まだまだ臨月じゃないのに、経管長、1センチ以下の、 皮一枚で繋がってる、とか言って笑ってたの!」 そこまで言うと、一瞬耳を離して、 「え!?」 って驚いた彼と視線が合った。 その顔をみて、 「ブフフッ…」 思わず吹き出して笑ってしまった。 引きつった彼の顔が、人差し指を口の前にかざして、 「しー!!」 っと、静かにしなさい、のポーズをした。 また、こっち来ての、おいでの仕草をすると、耳を私の口元に近づける彼に、 「ごめん!不謹慎なんだけど…、 ここの人たちと比べたら、私が一番、状況的には悪くないみたいだから… なんか安心しちゃって。」 そんな事で、比べたり、笑ったりしたことを怒られるかなって一瞬思ったけれど、 妙に納得した面持ちで、 今度は彼が内緒話のポーズをして、耳元で、 「まぁ、皮一枚に比べたらね…、それにしても、それは怖いね。」 と、彼が苦笑いした。 私の髪をまた手櫛でかきあげて、 「でも、落ち着いたって聞いて、少し安心したし、思ったより元気そうで安心した。」 そう言ってくれた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

318人が本棚に入れています
本棚に追加