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「仕事は、休んで大丈夫?」 ベッドを囲むカーテンの中、小声で聞いた。 「うん、とりあえず今日は、俺いなくても大丈夫なようにしてきたから。」 彼も小声で答えた。 もっと小声で、 「なんか、ずいぶん長い事会えてなかった気がする」 そう言うと、 椅子に座った体をベッドに寄せて、耳元で、 「うん。そうだね。」 と答えた。 経った4日会えなかっただけで、寂しいと思ってしまうなんて。 そんなんで、里帰り出産しようとしていたなんて、 里帰り出産となれば、数週間も離れ離れなのに、 そんなんで彼無しでやっていけるのだろうか…。 会えて、顔見たら、余計、寂しかったって気が付いた。 「ごはんどうしてる?ちゃんと食べてる?」 「大丈夫だよ。遅くなった日は食べてから帰ってた。」 「洗濯も、お母さんに持って帰って貰っちゃったけど…大丈夫だった?」 「うん。大丈夫。」 「遅く帰ってからの家事、負担だよね、ゴメンね。」 「俺の心配はいいよ。」 そう言って、頭を撫でられた。 耳元まで顔を近づける彼に、 「頭は洗ってるよ、昨日、看護師さんが、美容室みたいに洗ってくれたから。 一応、たぶん臭くはないし、汚くはない」 って笑って伝える。 「もっと腐ってるかと思った。」 クスッと笑って、言われて、 「腐る??」 私が睨むと、 「嘘。不安で泣いてるんじゃないかって、心配だった。」 そう言って、またおデコに当てた手で、私の髪を手櫛でかきあげた。
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