おやすみ

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今夜が山だと言われ、僕たちは病室のベットの回りに陣取った。 微かに咳をして、息も荒い。 死ぬことを拒むように、時々手を天井に伸ばす。 その手を引き留めるように掴んだ僕は、燃えるような母の手の熱さに驚いていた。 今にも死にかけようとしている人間が、こんなに燃えている。 死に様は生き様。 最近見たドラマの台詞が耳に浮かぶ。 星は死ぬときに一番光るんだ。 文系地学の先生が言った言葉がリフレインする。 母の身体がが僅かに痙攣した。 「……母ちゃん!」 すっと手から力が抜ける。 僕は、喘ぐように泣いた。 だけど、その涙は熱さを取り戻していて。 「…………おやすみ」 きっと母ちゃんは赤く輝く星になったんだ。 人間は星屑の子なんだよ……。 僕は静かに涙を拭い、母に最後のキスをした。
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