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いつか、「母ちゃんの子として」東大に受かってやる。そして官僚になって世界を変えてやる。 塾にも私立にも行けなかったから、僕は赤本を字が汗で滲んで見えなくなるまで繰り返し解いた。単語集は1つのものを表紙がヨレヨレになるまで読んだ。 たまに受ける模試で凹み、勉強し、また凹む。 E判定からやっと抜け出したセンター試験3か月前。 母ちゃんが、倒れた。 母方の家族がこっそり教えてくれた。家計は火の車、母ちゃんは三食のご飯すらケチっていた。 ……馬鹿!! 僕は見舞い返りの工事現場のコーンを蹴り飛ばすことしか出来ない。 その無力さに、涙が込み上げる。 その涙で、進学へ燃える炎が、シュンと音をたてて熾火となった。
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