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髪の綺麗な女の子だった。
年齢は分からないが幼さの残る顔からすると大体二十代前半だろう。
店で与えていると思われる露出の多い赤い服は彼女の幼い顔にはあまり似合っていなかった。
名前も知らない綺麗な女の子は挨拶でもしようというのか僕の座っていたソファに近づいてきた。
ほんのりと異国の石鹸の香りがした。
本から顔を上げて、
「お疲れ様。もう終わった?」と最近少ししゃべれるようになったばかりの英語で訊くと、
「ええ、お待たせしちゃいましたね」とぎこちない発音の英語で女の子は答えた。
「そう」
僕はようやく蒸し暑い夜から解放されると歓喜して文庫本を片手にソファから立ち上がって部屋に戻ろうとして、手を引かれた。
何だろうと思う間もなく、気がつくと彼女の唇が頬に触れていた。
柔らかいようなかすかな感覚と、顔が離れた拍子にふわりと先刻の香り。
少しして彼女が顔を離した後に、僕はキスをされたことに気がついた。
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