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家からプールまでは、走っても十五分はかかる。プールに着いたころには、案の定遅刻だった。待ち合わせしていた親友の哲司と美加は、既に待ち合わせ場所にはいない。見ればもう着替えていて、水の中で涼しそうにしぶきをあげている。
夏の日差しを浴びるプールの水は、激しく青い光りをまき散らす。その中で遊ぶ、無数の人々は、光の粒に塗れながら歓声をあげていた。
──遅かったか。まぁ、待ち合わせが二時だからな。
プールのそばにある時計は、すでに二時十五分を回っていた。
「あ! 竜也じゃん」
プールの縁にもたれていた哲司が竜也に気付いたらしい。美加を呼んで、プールから上がってフェンス越しに歩いて来た。太陽光が二人の水滴で反射し、眩しく光る。
「遅いねぇ、竜也さん。もう、十五分の遅刻ですよ」
時計をちらりと見、先生のような口調で言う哲司。
正直ウザったい。が、文句を言う訳にもいかず、
「悪い、忘れててさ……」
と謝っておいた。
「まったく、竜也はいつものんびり屋だなぁ」
見ると、後ろから来た美加も口を尖らせていた。
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