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五分後、竜也はプールの中にいた。冷たい水がヒートした体を冷やし、物凄く気持ち良い。刺すように強い日差しに体中を焼かれながらも、竜也は人の間を縫って歩いていた。
ただ、人が多過ぎて、泳げないのは残念だ。ごった返す人々の中では、泳ぐどころか、ただ浮くことすらままならない。
「な、潜りっこやろうぜ」
温泉のようにただ水に浸かる竜也に、哲司が話しかけて来た。哲司も、そろそろ暇になっていたらしい。
「お前、小学生かよ」
一応そう突っ込んでおく。
哲司は三人のペースメーカーのような存在だ。哲司が一度言ったことは、よほどのことがない限り、結局やることになる。無論竜也は、それを承知で突っ込んだのだ。
「うるせーな。負けた奴が二人にアイスバーおごるんだよ。おれ今日、金ないからさ」
金がないから……か。おごらせる気満々だな。
そんな哲司を破ってやれば面白いな、と竜也は腹の中で考えていた。
「子供ね」
哲司が呼んだのか、いつの間にか側へ来ていた美加は、そんなことを言いながら、それでもちゃっかりゴーグルを装着している。
「決まりだな?」
「オッケー」
「いいわ」
「よし。じゃあ行くぞ! せーのっ!!」
哲司の掛け声とともに、三人は同時に水中に潜った。
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