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水の中に入った瞬間、周りの音が即座に弱まり、水色の視界がいっぱいに広がった。プールの水は濁っていて、周りの人を見て取ることはできない。近くにいる哲司と美加以外の人やモノは、全て奥でぼやけ、目でとらえることはできなくなっていた。
まだ、余裕がある。哲司あたりにちょっかいでも出そうとしたその時、例の女性の声が響いた。
――ようこそ、タイムライン、時空を操る世界の旅へ
部屋の中では毎日のように聞いていた声だが、室外で、しかも友達といる時に聞くのは初めてだ。
驚いて思わず口を開けた竜也は、その拍子にプールの水を思いっきり飲んでしまった。
「ぐっ」
水中でむせる。気管に、水が入って来るのが分かる。息苦しくなり、急いで水から顔を出し、思いっきりせき込んだ。
それを見た哲司と美加も、水から顔を出した。
「はい、アイスバー決定ね!!」
嬉しそうに美加が言った。それでも、背中をさすってくれる。それが美加らしい。
「お前、水飲んだだろ」
ニヤニヤしながら、哲司も側で茶化してきた。
だいぶ落ち着くと、竜也は二人に聞いた。
「な、お前らも聞こえただろ? タイムラインがどうたらって声が」
だが、その問いに二人は、怪訝そうに顔を見合わせた。
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