1 出会い

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1 出会い

彼と私。  私が彼と出会ったのは二十二歳。オリンピックの年の中学校同窓会で出会った。「出会った」という言い方は語弊があるのかもしれない。だって私と彼は同じ中学に通う同級生だったのだから。彼から「俺のこと覚えてる?俺は君の事覚えてるよ。」と話しかけてくれたことがきっかけだ。  ごめんなさい。正直、あなたのことは覚えていなかった。名前はなんとなく聞いたことがあるような気がするけれど、中学生のあなたを全く思い出せない。彼の話によると、私と彼は一度だけ同じクラスになったことがあるし、何度か話をしたことがあるみたい。「実は君の家も知ってるんだ。こんな言い方するとストーカーみたいだな」そう言って君は笑った。ただ、私の家は通学路に面している家なので、この通学路を利用している生徒であれば、私の家を知っていても何らおかしくはない。「俺の家、公園の近くなんだよ」と彼は自分の家を教えてくれた。なんとその公園は私の家から徒歩十分くらい。ということは彼と私はご近所さんだった。「もう一つ、実は幼稚園も一緒だったんだよ」そう言われ、まさか幼稚園からの知り合いだったなんてねと私たちは笑った。 同級生のはずなのに思い出話は一切なく、はじめましてに似ているのになぜか懐かしい気がする。彼と私はしばらくそんな噛み合うことのない話をして盛り上がると、私たちは連絡先を交換した。それが当然、特別な意味はない、私たちは「同窓会」という流れに逆らうことなく、なんの戸惑いや迷いもなく連絡先を交換した。
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