カボチャ頭のナナとキキ

10/13
前へ
/13ページ
次へ
「すみません…カボチャを二つ、譲っていただけませんか。小さいのを。」 あの悲しい夜から一年… ハロウィンの前の夜、あの青年の元を、一人のお客が訪ねて来ました。 ナナとキキのお母さんです。 「それと…ワラを、分けてくださるとありがたいのですが。」 そう言って寂しそうに微笑むその人に、 青年は畑を駆け回り、一番形がよく、コロンとまあるい二つを選んで手渡しました。 「ありがとう。ああ、なんてかわいらしいの…あの子達みたい。」 彼女はそれで頭を作り、 ワラの体には、昨年までと同じように時間を掛けて縫い上げたワンピースを着せてやりました。 その姿は、まるであの日のままのナナとキキです。 「ハロウィンには、もとの体で帰って来られるようにしてあげたいの。」 そんなお母さんの思いを汲んで、町の人達はたくさん、たくさんジャック・オ・ランタンを作りました。 町中のカボチャがなくなるくらい。 どの町よりも、煌煌とするほどに。 悪い精霊がもう現れないように…ナナとキキが、道に迷わないように。────
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加