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「すみません…カボチャを二つ、譲っていただけませんか。小さいのを。」
あの悲しい夜から一年…
ハロウィンの前の夜、あの青年の元を、一人のお客が訪ねて来ました。
ナナとキキのお母さんです。
「それと…ワラを、分けてくださるとありがたいのですが。」
そう言って寂しそうに微笑むその人に、
青年は畑を駆け回り、一番形がよく、コロンとまあるい二つを選んで手渡しました。
「ありがとう。ああ、なんてかわいらしいの…あの子達みたい。」
彼女はそれで頭を作り、
ワラの体には、昨年までと同じように時間を掛けて縫い上げたワンピースを着せてやりました。
その姿は、まるであの日のままのナナとキキです。
「ハロウィンには、もとの体で帰って来られるようにしてあげたいの。」
そんなお母さんの思いを汲んで、町の人達はたくさん、たくさんジャック・オ・ランタンを作りました。
町中のカボチャがなくなるくらい。
どの町よりも、煌煌とするほどに。
悪い精霊がもう現れないように…ナナとキキが、道に迷わないように。────
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