4人が本棚に入れています
本棚に追加
「おばあちゃん、元気だった?」ナナがお母さんの右手をとって、
「久し振りだね、おばあちゃん!」と、キキは左手をとります。
「ええ、ええ、本当に。あなた達も元気そうで、おばあちゃん嬉しいわ。」
お母さんは、呼び方を直すことはありません。
数年前から、ナナとキキはお母さんを“おばあちゃん”と呼ぶようになりました。
「ふふ、この子達ったら。“お母さん”でしょう?一年会わない間に忘れちゃったの?」
イタズラが好きだった二人のことです。きっと、ふざけているんだと思いました。
でも…。
「あら、そうだったかしら。でも、ワタシ達のお母さんは、もっとずうっと若いのよ?ねえ、キキ。」
「そうだわ、ナナ。それに…ワタシ達カボチャ頭だから、すぐに忘れちゃうの。」
ニブイ音をさせて頭をぶつけ合いながら、二人はコロコロと笑います。
お母さんは思いました。
ああ、この子達はもう、私の知っている二人ではないのかも知れない。
いつか“おばあちゃん”とも呼んでくれなくなって、ここにも帰って来られなくなるかもしれない。
そうして全部忘れてしまうんだ。
そして、カボチャとワラのお人形が、動いてくれなくなる日が来るんだと。
それからは、二人が呼ぶままに、自分も年を取っていこうと決めたのです。
最初のコメントを投稿しよう!