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“ボーン…ボーン…”
時計の針が十二時を指して、鐘が鳴りだしました。
「あ、もうハロウィンが始まる。」ナナが時計を見上げて、
「おばあちゃん、あとはお願いね。」と、キキは連れて来たカボチャ達を振り返りました。
「まかせておいて。」
お母さんが二人を抱き締めると、両耳でかわいらしい声が歌います。
“トリック・オア・トリート、トリック・オア・トリート…さあさ、お菓子にしておくれ”
十二度目の鐘が鳴り終わる頃…
お母さんの腕の中では、カボチャとワラのお人形がダラリとしているだけでした。
「ナナ、キキ…おやすみなさい。」
お人形達の頭をそっと撫でてやると、お母さんは少しの間だけ泣きました。
温めたミルクを飲んで、冷たいお水で顔を洗って…
それから、キッチンに立つのです。二人のお願いを叶える為に。
「何年経っても慣れないものね。でも、イタズラされちゃ堪らないから。」
そう笑って、オーブンの火にワラをくべるのです。ワンピースまで、残らず全部。
そうして、夜明け前の町を甘い香りで包むのです。
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