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秋が町を食べに来る。
この町の人達は、季節の訪れをそんなふうに言い表す。
春の花も、夏の風も、冬の静けさも…みいんな、季節のお腹の中を通っている間のことなんだって。
だから、世界中が一息に同じ季節になることはないの。
どんなに大きな口だって、地球を丸呑みには出来ないもの。
そんな秋の喉元で…いいえ、もう少し先かしら。
とにかく、町は秋を迎えて、実りの喜びにわいわいと賑やかだった。
大人達は収穫に忙しく、子供達はあるお祭りの準備に忙しかった。
ハロウィン!
今年はどんな仮装をしようか、どんなイタズラをしてやろうか。
誰よりも大きなジャック・オ・ランタンを作るぞ!なんて、皆みんな楽しそう。
そうしてやって来た十月の終わり。
子供達が、明日のハロウィンにわくわくしながら眠りについた頃…一足先に、なんとも奇妙なお祭りが始まります。
その日の為に用意されていたカボチャの、ハロウィンパレードです。
農家の納屋を抜け出して、カボチャ達はゴロンゴロンと進みます。
皆のお家の庭先に飾り付けられた、魔女の人形もガイコツも、次々にパレードに加わって、大変な騒ぎよう。
けれど、町の人達は誰一人参加してはいません。
人はもちろん、犬や猫、小鳥であっても、“生きたもの”はそこに居てはならないのです。
これは、死者の行進なのですから。
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