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「ねえ、キキ…ワタシの体、どこにいっちゃったの?」
「ああ、ナナ…ワタシの体も、どこかにいっちゃったみたい。」
“ナナー、キキー…ナナ!キキ!”
窓の向こうを、いくつもの明かりが通り過ぎていきます。
お母さんの声、近所のおじさんの声、あの青年の声も聞こえてきます。
“ワタシ達はここよ!”
大声でこたえているのに、ちっとも聞こえていないみたい。
と、列の一番うしろ。
皆とは違う青い火を点した人影が、窓の外で立ち止まるのが見えました。
その影が、すうっと窓を通り抜けて入って来ます。
『ひっ。』
いつもは気の強い二人も、これには思わず声を上げました。
逃げようにも、頭だけではグラグラと揺れるばかり。
「ねえ、びっくりした?」
影は、いつのまにか女の子になっていました。二人よりも小さな女の子です。
「あたしね、ハロウィンまで待ちきれなくて、ママに内緒で一足先に町に出て来ちゃったの。
そうしたら、お姉ちゃん達がとっても面白そうなことをしているじゃない?
だから“一緒に遊ぼうよ”って言ったのに…二人して聞こえないフリなんかして寝ちゃうんですもの。
悔しいから、イタズラしちゃった。カボチャと一緒にチョキン!って。」
女の子は一度頬っぺたを膨らませたあと、無邪気に笑いました。
二人はイタズラはするけれど、イジワルをしたりはしません。
女の子の声なんて、本当に聞こえなかったのです。それどころか、姿だってどこにもありませんでした。
無理もありません。
その子は人ではなく、悪い精霊だったのですから。
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