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「俺と別れたくない君の気持ちは、すごく嬉しい」
「いえ、あなたとではなく、出版の仕事と……」
「だが、喜んでくれ。君の場合は、素晴らしい好条件なんだ」
「でも!」
「なにより、その会社は、出版社なんだ! 版元なんだよ!」
「なんですって!」
版元とは、自分の会社の名で、本を出版している会社を言う。
臼杵デザイン事務所は、自分の会社で本を出版していない。あくまで、出版社から編集実務を請け負う、下請けだ。
……いつかは、企画から配本まで、まるごと一冊の出版に、携わってみたい。
それが、直緒の希望だった。
児童書でも学習参考書でも、なんなら、電気や水道などの、専門団体でもかまわない。いっそ、宗教関連でもいい。何にでも改宗する決意が、直緒にはあった。
求人さえあれば。
版元で働くことは、直緒の長年の夢だったのだ。
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