第1章 女の子のズボンの、前のふくらみ

2/33
201人が本棚に入れています
本棚に追加
/909ページ
 「あのう。ここに、誤植が」 タブレットを読んでいた本谷直緒はつぶやいた。  本谷直緒(もとや なお)は今、就職試験を受けている。  試験は、町の商工会議所の小部屋で行われていた。  エンタメ系の出版社の中途採用だ。  受験者は、直緒一人だった。    「ほう。どこに」 試験官が、立ったまま尋ねる。  身長はゆうに180センチを超えるだろう。  サイドベンツの黒いスーツを着用している。上着のウエストが絞られており、裾が華やかに広がっている。  まるで、西欧中世の騎士のようだ。  年齢は、直緒より少し、上のようだ。  浅黒い肌で、彫りの深い顔立ち。短髪を、わずかに立てている。
/909ページ

最初のコメントを投稿しよう!