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桂城は直緒の方に一歩踏み出し、鼻の穴を膨らませた。
「吉田先生は、しあわせ書房が目をつけた絵描きさんだ。先生の絵は、純真な子どもたちのためにこそ、あるんだ。モーリスなんかに渡さないぞっ!」
「あんたにそんなことを言う権限は……」
直緒が言いかけたのに、被せるように、桂城がせせら笑った。
「BL? ヒロム先生の絵が汚れるというものだ。こんなファンシーな絵で、男同士のあんなことやこんなことを描かせていいと思うのかね?」
「いや……」
あんなことやこんなこと?
キスのことか?
キスなんてフツーだろ。
直緒は思った。
原稿から読み取れる具体的行為は、キス止まりだった。
だが、直緒自身、吉田先生のメルヘンチックな画風は、BLには合わないんじゃないかと思わないでもない。
いや、思いっきり、思う。
男同士というのは、どうしても、ごついイメージがある。BLというからには、かわいらしさは似つかわしくないように思う。
勢い、言葉が弱くなる。
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