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「黙れ! 編集長は、自力で会社を興したんだぞ! 足りない分はデイトレードで賄ってるんだ」
思わず、直緒は叫んだ。
「デイトレードだあ?」
もはや馬鹿にしきった表情を隠そうともせず、桂城は嘲った。
「言うに事欠いて、デイトレードとは。本末転倒もいいところじゃないか。それじゃ、お嬢さんのお遊びだ」
「うるさい、編集長を悪く言うなっ!」
「まだいたか、草食系のヘナヘナ男がっ!」
「どこがへなへなだ、どこがっ」
「全部だよっ!」
桂城は腕まくりをした。
「やるか」
直緒も足を踏ん張り、ネクタイを緩める。
「ステキ! ネクタイを緩める男性って、クるわ! 頑張るのよ、直緒さん」
典子が黄色い声援を送る。
……いや、これは、指令か?
「一乗寺さん、煽ってどうするのです、煽って!」
ヒロム先生が焦ったように、典子を制している。
桂城が、歯をむき出して、直緒を見た。
「こらお前、腐った妄想のエサにされてるぞ! なんとか言え!」
「お前こそ、意味不明(イミフ)なこと、口走ってんじゃない!」
「ああ、もう、どうしましょう! ヒロム先生と桂城さんが一緒にいただけでもご馳走だったのに、直緒さんも巻き込んで決闘なんて。これはもう、先生を頂点にした三角関係以外、あり得ないわ!」
感に堪えぬという風に、典子が両手を胸の前に組む。
心なしか、その目は、潤んでいるようだ。
「モーリス!」
「一乗寺さん!」
桂城とヒロム先生が、同時に叫んだ。
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