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いや、そんなこと、聞かなくてもわかるだろうと、直緒は思った。
桂城は間違いなく、直緒を叩きのめそうとしている。
始めは言葉で。
そして今や、腕力で。
桂城の顔が、おもしろいように赤くなっていく。
ついに、理性のタガが外れたようだ。
腕を振り回し、わめいた。
「モーリス、殺す!」
「こらっ、お前の相手は俺だろうがっ!」
直緒が叫ぶ。
「違うわっ! 何ぬかすっ!」
こんなにも激昂した男を、今まで直緒は見たことがない。
こめかみに青筋が立ち、今にも切れそうだ。
自分が何発か殴られるのは構わない。こっちだって、おとなしくしているつもりはない。
だが、暴力が典子へ向けられることを、直緒は恐れた。
「まさか女性に手を出すほど卑怯じゃないよな」
「女に手を出す方が、どれだけまともか!」
「お前……許さん!」
怒りに火がついた直緒が、こぶしを固めた、
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