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老婆は典子に向き直った。
「だれが、先生が受けだと言った。あんた、攻め×攻めの醍醐味を知らんのか?」
「あっ!」
弾かれたように典子が叫んだ。
その頬が、みるみる紅潮していく。
「その手があったか!」
老婆は、ふふん、と鼻を鳴らした。
「お互いのことを想いながらも、男のメンツにかけて、攻めの属性は譲れない。どんなに相手への思いが深まろうと、葛藤があるんだ。それが今までの、絵師と編集者の関係」
「ああっ!」
「そこへ、突如現れた受け」
老婆はぐいと顎をしゃくって、直緒を示した。
「当然、アテウマじゃ。不毛な恋に疲れ果て、思わずすり寄って行く、絵師。焦る編集者。二人は思い合っていたはずなのに。なぜ、アテウマごときに……千々に乱れる編集者は、アテウマに戦いを挑み……これが、腐女子として、正しい妄想であろう」
「おっ、おみそれしましたっ!」
典子は深々と頭を下げた。
ヒロム先生と桂城は、呆然としている。
高齢の女性が、いきなり攻める、だの、男のメンツだのと言い始めたので、直緒も驚いていた。
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