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典子はすでにエレベーターに乗り込んでいた。
「開く」のボタンを押したまま、直緒を待っている。
「やりましたよ」
直緒は親指を立てた。
「腐った目で見たというのは、……その通りだと思うわ」
典子が言った。
「腐ることに、誇りを持たなきゃ」
「編集長、そこですか……」
直緒が脱力した時、頭の上から、なにかが降ってきた。
顔についたものが口の中に入る。
塩辛い。
どこに隠し持っていたものか、直緒めがけて、桂城が塩を撒いたのだ。
立ち直りが早い。
早すぎる。
「帰れっ、戻れっ! 二度と来るなっ! くたばれBLっ!」
激昂して、桂城が叫んだ。
その横で、ヒロム先生が、拝むように両手を合わせている。
ま、いっか。
当初の目的通り、ヒロム先生は、モーリス出版の為に描いてくれることになったし。
……あの絵柄は、やっぱり、ちょっと違う気がするけど。
そこだけは、桂城と同意見だ。
しかし、典子が惚れ込んだ絵師さんだから……。
軽く頭を下げて、直緒は、典子の待つエレベーターに乗り込んだ。
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