第1章 女の子のズボンの、前のふくらみ

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「……」 「……」 「で、どこが?」 「歩は、奥手の女の子の設定です」  直緒は言った。  そこまでの文章から、そう、読み取れる。 「その彼女が、シャツの下に何もつけていないなんて、おかしいです。つまりその……」 「彼女?」 黒服の青年は露骨に不快そうな顔をした。 「もういいです。実技試験は終了です」 彼は言った。 「続いて、社長面接があります。しばらく、このままでお待ち下さい」  そう言うと、ひったくるように、直緒の手から、タブレットを取り上げた。  振り返って、直緒を見下ろした。 「それから。『歩』は、アユミじゃなくて、アユム、ですから」 言い置いて、部屋から出て行った。  ……だって、どこにもルビ、振ってなかったじゃん。  一人残された直緒は、憮然とした。  ……まさかヒロインの名前を読み間違えたからって、減点はないだろうな?
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