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『商店街一奇妙な店 あなたの恋を叶える Cafe 銀-しろがね-』
ポスターにこんなむず痒いフレーズを載せてはいけないか。第一、コーヒーと食事が自慢の店なのに、どうしてこんな店になってしまったんだ。
閉店直前、自宅でもある喫茶店のカウンターの席で、日陰 東(ひかげ あずま)は頭を悩ませていた。
パソコンのベクター描画ソフトとにらめっこを繰り返していても、ポスターが完成する事など無い。
あれは何なんだ。東はいつもそう思ってしまう。
この店には、一年程前から巨大な扉付きの箱が鎮座していた。
東の姉で、この店の店長でもある日陰 翠(ひかげ みどり)が設置した物だ。
店の一番奥にあるデッドスペースを席として活用しているといえば聞こえは良いのだが、その箱は分厚いダンボール製の組み立て式防音室に、黒いフェルト生地を張っただけの物で、中には向かい合った椅子二脚と、ティーカップが二つほど辛うじて置けるほどの小さいテーブルが、その間に置かれているという代物だ。
そ翠はその箱で、何故か恋愛相談のような事を始めたのだ。
『……奇妙過ぎるよ』
なかなかの存在感を放つ箱が視界に入る度、東はそう嘆かずにはいられなかった。
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