第1章 2話「雪の夜の夢」

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第1章 2話「雪の夜の夢」

俺には親がいない。 どちらも10年前の冬に交通事故で死んでしまった。 だから、それ以降俺は香澄の家に居候することになった。 香澄は母親の一恵(かずえ)さんと2人暮らしで 一恵さんは俺を実の息子のように優しく接してくれている。 俺達が雪の中家に着き、玄関のドアを開けると一恵さんが笑顔で待っていた。 「「ただいま?」」 「おかえりなさい。寒かったでしょう?ご飯できてるわよ」 「すみません、一恵さん。いつもいつも」 「あら、翔くん。なぁに今更になって。いつものことじゃないの」 「いえ、なんかお礼が言いたくて」 「ふふ。ありがとね。さ、上がってご飯食べなさい」 「……はい」 俺は本当に優しい人達に恵まれている。 俺たちはご飯を食べ、お風呂に入った。 そのあとは柳田家では「リビングで今日の出来事を皆で一時間トーク」をすることが習慣になっている。 「そういえば、今日は雪が降ってますね」 「そうそう!それよ!雪なんて珍しいよね」 「珍しいというか初めてだろ」 「いいえ、初めてじゃないわ。多分10年ほど前の丁度この頃に一度降ったはずよ。あの時はだいぶ積もったわね」 「え?」 10年?それは俺の両親が事故で死んだ年じゃないか? 俺は記憶を遡る。 すると、突然ものすごい頭痛が走った。 頭を抱えて俺は倒れ込んだ。 「あああっ……!」 「ちょっと、翔!?大丈──」 俺の意識は暗闇へと堕ちていった。 ────────────────────── その日、俺は夢を見た。 昼間だろうか。しかし天気は曇りである。 俺は雪の積もった道路に立っていた。 目の前には神社があり、赤い鳥居の階段の下には小学生辺りの男の子が俯いて座っていた。 俺はとりあえず男の子の横に座る。 「おい、どうした?」 男の子は俺の声には反応せず俯いたままである。 「大丈夫か?おい……って、え?」 俺は、男の子の背中に触れようとするが透き通ってしまう。 「お、お前幽霊か!?あ、いや俺か!?俺なのか!?」 一人で焦っていると、男の子は泣き出した。 その子の泣き声はどこか聞き覚えのあるような、そんな気がした。 「お父さん……お母さん……」 そして俺は気づいた。 「こ、この子は……俺……なのか?」 泣きながら見るもう1人の俺を見ていると誰か神社から降りてくるのが見えた。
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