―第二十節 種アカシ―

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「えっと、私があなたの主治医の…」 …? 「太野星輝です。」 ええー!フードの中からニッと笑った僕の顔がのぞいた。 「あ、明日華さん?」 「何言ってるんだ。正真正銘の僕だよ。僕。」 「え…どうして…?」 「何で君がこの世界に来たのか知ってるかい?」 「そんなの知ってるわけが…」 「それなら詳しく説明しよう。僕たちの世界と君たちの世界は、パラレルワールドになってるみたいなんだ。君がこの世界に来た日、その時僕は自分だけ能力がないことで思いつめて、自殺しようとしてたんだ。ところが、皮肉にも首をつっている最中に、僕の生まれつきなかった超能力が覚醒したんだ。覚醒した時の行方は何しろ行き先が指定できないもので、場所どころか世界ごと瞬間移動しちゃったみたい。まあ、到着したところが君の部屋だったから、世界ごとだって気づけたんだけどね。こうして君たちの世界に来た僕は、とりあえず同じ人間が二人いるのはまずいと思ったから、君を僕の世界に飛ばしたんだ。その前に自分が戻ればよかったんだけどね。安心しちゃったのか、それからは場所を移動できても別の世界は移動できなくて、帰れなくなっちゃったんだ。それから四日間、試行錯誤でようやくこの世界に戻ってこられたんだ。そして君が病院へ運ばれるのを見て、医者のふりをして君と接触したわけ。」 なるほど。だから目覚めたときからこの世界だったのか。 「それじゃあ、四日間の情報交換をしないと。」 「そういうこと。」 僕らは四日間の出来事を話した。向こうではここほどめちゃくちゃなことは起こっていないようだ。彼は僕の話を聞いて、めんどくさいことになっていたのなら、入れ替わってよかったと話していた。 「じゃあもう帰っても差し支えないな。なんか、やり残したことはないか?」 「うーん、そういえば、智衣ちゃんが何か話したそうにしてたけど…」 「じゃあ呼ぼう。みなさん、入っていいですよ。」 すると真っ先に智衣ちゃんが入ってきて、後に続いてみんなが来た。そして智衣ちゃんが啖呵を切った。
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