きっと、何度でも

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目を開けると、そこには 「ゾンビがめっちゃいる。ってさ、」 いや、ほんと、勘弁してほしいよね。 思わず口から飛び出したのは、あり得ないのにありふれた世界の話。 「元から居るならまだしも、目が覚めた瞬間にゾンビ、とかきついなー。」 「それ、もう襲われる直前じゃねーか。」 「家族とかがいきなりゾンビ化したら、目を開けたらいきなり!とかあり得るでしょ。」 「あり得てたまるか、ンな地獄。」 テレビに映し出される非現実的な物語は、世にゾンビが溢れ返る、所謂パニックホラーの名作。 「だけど、ゾンビになったら家族も恋人も友達も全部忘れそうじゃない?どんな気持ちなんだろ。忘れた方も、忘れられた方も。」 隣で一緒にテレビを見ている男を見れば、呆れたように笑われた。 彼氏、ではない。 友達、よりは上。 幼馴染みとか腐れ縁なんて間柄のその男とは、こうやって週末にどちらかの家で映画鑑賞したりゲームをしたりするのが習慣になっている。 「何も考えられなくなってんだから、悲しいも何もねぇだろ。まぁ、“忘れられた”方はたまんねぇだろーがな。」 「アンタも、私がゾンビになったら悲しい?」 「まぁ、虚しくはなるわな。こうやって一緒にテレビ見る事も出来なくなるんだから。お前はどうなんだよ、俺がゾンビ化したら。」 「あー・・・たぶん殺すね。一撃で。」 「お、ま・・・っ躊躇いねぇのかよ!」 「躊躇ったら、私が殺されるでしょ。そしたら誰かにアンタを殺されるかもしれないじゃない。 そうなる位なら、」 アンタを殺して、私も死んでやるわよ。 テレビ画面を見ながら冗談混じりにそういえば、急になくなる返答。 どうしたのかと視線をそちらに向ければ、驚く程に間抜けな顔がそこにあった。 「何、その顔。」 「・・・お前ってさ、それ、無意識?」 「何が?」 「何でもねぇよ。」 問いかけに返されたのは何とも掴み様のない言葉で。 更に問おうとする前に、ぐしゃ、と頭を撫でられて言葉を続けられなかった。 「お前がゾンビになったら、俺も、お前殺してから死んでやるよ。」 少し上機嫌な響きを帯びた言葉を聞きながら、私達は再び画面に目を移した。 (貴方を殺して、) (自分も死ぬ、なんて、) (そんなのは、まるで愛の告白じゃないか。) お互いに、紅く染まった頬の意味を理解するのは、もう少し先の話。
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