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小さくため息をついた倭(やまと)が、話を変える。
「九重さんも結婚するってさ」
九重莉桜(ここのえりおう)。僕と【彼女】の同期。
「そう。じゃあお祝い贈らないとね」
「時期はずらすって」
倭があいまいに言うのは、奴なりの気遣いだろう。
「……招待状、そっちに送るってさ」
最後の言葉は九重さんたちのことではなくて、【彼女】たちのことだ。
仕事や家の関係者を集め、改めて大きな式を挙げるらしい。
「忙しくて帰れそうにないから、欠席するね」
【彼女】のも九重さんのも。
「彪翔……」
「見るのが辛いんじゃないんだ。自分がどんな行動に出るのか分からないから、怖いんだ」
僕が【彼女】に出来ること。それは極力離れていることだと思っている。
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