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日本に戻れないまま一年以上が過ぎた。
春が来て夏を越して秋になる。
時々時候の挨拶程度のやり取りはしてるし、近況も耳に入ってくる。
【彼女】が幸せであればそれでいい。僕のいない世界で勝手に幸せに笑ってて欲しい。
身勝手な願いを理由に、避けていたのだ。
「ねぇミウラ、今度のパーティーは私と行ってくれるでしょう?」
仕事帰り。同僚の女性が腕を絡めてくるのを、さりげなくほどいて断る。
「ごめん、その日は都合が悪いんだ」
「いつもそれじゃないっ」
何度誘われてもデートに応じない僕に、苛立ったように歩道に転がる空き缶を蹴っ飛ばした。
見事なシュートで缶が弧を描いて飛んでいき、前を歩く人にぶち当たる。
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