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藍井紅羽(あおいくれは)。今は苗字が【東條】に変わってしまったけれど。
僕の世界を色づけて動かしてくれた女の子で、僕の世界の全てだった。
今は、もう。ひとの妻になったけれど……
「な、何だよ。泣くなよ。な?買ってくれたのは嬉しいからさ」
ハンバーガーの袋を抱え、少女がおろおろと気遣ってくる。
「……泣いてないよ。驚かせてごめんね」
人前だということを思い出し、とっさに取り繕って微笑んだ。
「誤魔化すなよ、泣いてるじゃんか。辛いときは我慢するの、よくないぞ」
涙なんて出ていない。けれど心に鋭く切り込んでくる少女の言葉を、とっさにかわす。
「ホームレスのフリするのもよくないよ。危険な目に合わないうちに、家に帰るんだよ」
少女に視線を合わせて、微笑んだ。
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