優しき者より、護るべき者たちへ

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あぁ、生活環境はさほど悪くはない。 一般的な両親がいる恵まれた家庭に生まれ、気のいい友人に恵まれ、つつがなく大学を卒業して就職した……はずだった。 「僕の両親も悪い人ではないんだけど……」 父さんは“努力の人”だ。 自分のマイナスを0に持ち上げ、プラスにまで発展させる。 幅広くモノを見て、幅広く知識を得ている。 幼少の頃に色々あって母さんと出会ったらしいが、それでも父さんは変わることなく成長を続けた。 折れても、曲がっても、悩んでも、苦しんでも、泣いても、怒っても……。 正しくあろうと背筋を伸ばし、前へ進み続けた僕の一つの理想。 母さんは“天然”だ。 独特な感性を持ち、突拍子のない行動を取っても誰かから愛される。 小さな家で生まれ、着々と成長し、死にかけた状態で父さんと出会い、一つになった……らしい。そんなことを嬉しそうに語るもんだから子供の情操教育にどうなんだって思った頃もあった。 折れることも、曲がることもなく、それでも悩み、もがき、苦しみ、泣いて……。 たとえ、正しくなくてもケロッと前を見続ける僕の一つの理想。
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