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ハッと振り返ると、長身の男性が立ち尽くしている。
廊下のほうが明るくて、顔かたちがはっきり見えない。
「……あ、すみません。おはようございます。校長室ってどっちですか?」
「あ、校門側と反対の……3つ隣の部屋です」
「ありがとうございます」
男性は軽く会釈し、開けたときと同じようにガラリと引き戸を閉めていった。
だれなのか確認する間もなく行ってしまったので、まあいいかと窓の外に向き直る。
……教頭先生に、なんて言おう。
週末の旅行がほぼほぼ“婚前旅行”だということを伝えてあったのに。
ショックが大きすぎて、お土産も買ってきていない。
恥と憂鬱が体の周りをのたくって、ここから逃げてしまいたかった。
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