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大きな眼が見える。倒されたはずの魔王の眼だ。威圧感に圧倒される。血のような赤眼をしており、何か訴えた気な様子だった。
アタシはガバッと起きる。
あまり良くなかった。そんな夢、不吉なだけだった。
せめて父さんが生きていれば…。
朝日が眩しい。
目を凝らしてよく見るとクイーンベッドのカーテンから、窓辺に鳩が寄って来ているのがよく分かる。
アタシは大きな欠伸をして、また布団の中に潜ろうとする。羽毛の枕を抱くと落ち着くとか布団は愛情のこもったものだとか考えている内にまた眠気が襲って来る。
だが、再び同じ夢を見ると、眠気は覚めた。
渋々、欠伸を噛み殺し、起き上がる。窓を開け、鳩達を驚かせて散り散りにさせた後、屋敷の庭に目をやると稽古に励む従兄弟がいた。
「王国精霊騎士さんは朝早くから大変ですね」
皮肉気に声をかける。
直ぐに応答が返って来る。
「無能は無能らしく無意味に足掻いてろ、リース」
アタシは苛立ちを抑えて向きを変えると、目を擦って右手首に付けていた黒いリボンの髪留めで自分の長いオレンジ髪をポニーテールにした。
ラウルは女の子に優しいと評判だが、アタシは特別扱いされているらしい。全くもって光栄なことだ。名家であり元精霊騎士団長の父を持つアタシがほぼ何の力も無いただの人間なのは母さんの血だろう。
光の下級精霊のフューがいつものようにボーッと漂っていた。
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