第1章 英雄に憧れる少女

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母さんが止めるのを聞かず、屋敷の庭に足を運ぶ。丁度、アタシの部屋の窓が見える位置だ。強烈なキンモクセイの香りが漂って来て、少し目眩がした。 ラウルが口を開く。 「ルール決めようぜ!俺のみぞおちに少しでも触れることが出来ればお前の勝ちだ」 アタシは毒吐く。 「畜生!なめやがって!!後悔させてやる。で、アタシの敗北条件は?」 また鳩がアタシの部屋の窓に集まっているのが見える。太陽がサンサンと降り注ぎ、うたかたな朝だった。 アタシは雲が轟音を立て気ままに流れて行くのを眺めていた。 フューとロードクライは仲良さげに絡んでいる。 ラウルはヒャッヒャッととても紳士的な王国精霊騎士とは思えない笑い声を上げ、右人差し指を立てる。 「〝ラウル様、アタシの負けです〟って言ったら許してやるよ」 アタシはラウルをキッと睨み付ける。 こいつだけは許せない。 「受けて立とうじゃん?やってやんよ!」 ラウルも本気で怒ったようだ。 「ガキがいきり立ったところで何も変わらねえんだよ。この世界もそうだし、いつの時代もそうだ。身の程わきまえないと死ぬぞ?」 〝死〟という単語にビクッと来る。それでも見栄を張らないとアタシがアタシである必要性が消える気がして、自棄っぱちに吐いた。
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