【1】4月1日は吉日?

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幼い頃の裕は、お父さんと叔父さんも、裕は同じくらい好きだったから、固まったようにむっつりしている二人を見るのは辛かった。 今は別の理由で辛い。距離が生まれる理由を知ったからだ。 父と叔父は異母兄弟。 祖父に母が異なる子供が二人いるということは……片方は嫡男、もう片方は庶子。難しい関係になるのは当たり前のこと。 私の家にはお父さんとお母さんと私、おじいちゃんにおばあちゃん、そしておじさんとおばさんといとこがいる。 シンプルな家族関係のようでいてそうではない。 結婚の有無と子供の生まれが、家族を、親族を、兄弟を、難しくする。 ――わかんない。 何で、おじいちゃんは、お父さんのお母さんがいたのに、叔父さんのお母さんとの間にも子供がいるの? 裕も子供ではない。 男女のことも、どうすれば子供ができるのかも、禁忌も知っている。 いけないことをしてしまうのは、何故? 人を好きになると、いけないこともやって良くなるの。 男と女って――よくわかんない。 ホント、興味ない。 わかりたくない。 大きな目はどんどん引き絞られ、しまいには目付きが悪くなった姪に、慎一郎は言う。 「引っ越しの片付けは、済んだのかな」 「うん、おかげさまで。昨日、あらかた終わったよ」 「そうか、それは良かった」 「良かったと思う?」 「不機嫌そうだね」 「どうも」 「君のことだ、今日は晴れ晴れとした顔でここに来ると思っていたんだが」 「奇遇ね、私もそう思ってた」 目をさらにつり上げて見る姪に、叔父は苦笑を返す。 「あのねえ、引っ越しではねえ、いろいろあったんだよ!」 「うん、だろうね。あの兄のことだから。聞きたいとは思わないが」 「聞いて!!!」 裕は、少し前、合格通知を受け取った直後のことを話し始めた。
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