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幼い頃の裕は、お父さんと叔父さんも、裕は同じくらい好きだったから、固まったようにむっつりしている二人を見るのは辛かった。
今は別の理由で辛い。距離が生まれる理由を知ったからだ。
父と叔父は異母兄弟。
祖父に母が異なる子供が二人いるということは……片方は嫡男、もう片方は庶子。難しい関係になるのは当たり前のこと。
私の家にはお父さんとお母さんと私、おじいちゃんにおばあちゃん、そしておじさんとおばさんといとこがいる。
シンプルな家族関係のようでいてそうではない。
結婚の有無と子供の生まれが、家族を、親族を、兄弟を、難しくする。
――わかんない。
何で、おじいちゃんは、お父さんのお母さんがいたのに、叔父さんのお母さんとの間にも子供がいるの?
裕も子供ではない。
男女のことも、どうすれば子供ができるのかも、禁忌も知っている。
いけないことをしてしまうのは、何故?
人を好きになると、いけないこともやって良くなるの。
男と女って――よくわかんない。
ホント、興味ない。
わかりたくない。
大きな目はどんどん引き絞られ、しまいには目付きが悪くなった姪に、慎一郎は言う。
「引っ越しの片付けは、済んだのかな」
「うん、おかげさまで。昨日、あらかた終わったよ」
「そうか、それは良かった」
「良かったと思う?」
「不機嫌そうだね」
「どうも」
「君のことだ、今日は晴れ晴れとした顔でここに来ると思っていたんだが」
「奇遇ね、私もそう思ってた」
目をさらにつり上げて見る姪に、叔父は苦笑を返す。
「あのねえ、引っ越しではねえ、いろいろあったんだよ!」
「うん、だろうね。あの兄のことだから。聞きたいとは思わないが」
「聞いて!!!」
裕は、少し前、合格通知を受け取った直後のことを話し始めた。
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