第1章

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『……俺。 今晩ヒマか?』 かかってきた電話から流れる聞きなれた声。 「特に予定はないが……何だ?また振られたのか?」 昼休みのロビーの片隅。 加納涼が紙コップのコーヒーを持ち直す。 むっと押し黙った電話の向こ うの気配に、 ビンゴと胸の内で独りごちた。 「今日は金曜だし定時に上がれる。 どこかで待ち合わせるか?」 『どこでもいい。 任せる』 なげやりな声音に苦笑して。 なじみの居酒屋を指定した加納が電話を切った。 電話の主は赤川大地。 小学校の頃からの幼馴染だ。 つき合ってる女性と別れるたびに電話をかけ てくる。 ここのところずっと連絡がなかったから、 巧く行ってるのだろうと思っていたのに。
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