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寝室には布団が二組敷いてある。互いに自分の布団に潜ると妻は電気の紐に手を掛けたが、その仕草に対して私は僅かな違和感を覚えた。
訝しぐ私を他所に妻は紐を引っ張ろうとしたが、その手を止めて尋ねてきた。
「そうだ。今日はオレンジにしなくて良いですよね?」
「オレンジ?」
「ええ。明りが消える一歩手前の状態じゃなくて、真っ暗にしちゃっても」
「ああ、そう言うことか」
何をしたいのか理解したが、ふと疑問に思う。
妻とは見合いで結婚した。その際にお互いに「真っ暗でないとぐっすり眠れない」と意見が合ったのを覚えている。生活習慣が似た者同士でないと結婚生活はうまくいかないと言うのが私の持論だったから、確かな記憶のハズだ。
そして私が寝る時、部屋はいつも真っ暗だった。
「いつも真っ暗じゃ無かったけ?」
私が首を傾げると、妻はクスクスと笑いながら言った。
「もう! ボケちゃ嫌ですよ。あなたが真っ暗にしていたんでしょ?」
それを聞いてハッとした。
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